大阪医科大学小児科、同神経精神科、同保健管理センター、関西大学社会学部
田中英高、竹中義人、山口仁、金泰子、松島礼子、神原雪子、梶浦貢、玉井浩、寺嶋繁典、
岡田弘司、二宮ひとみ、澤村律子
小児の心身症で最も多い訴えは、不定愁訴
(注2)です。
そこで小児不定愁訴に対して大阪医科大学小児科はどのような全人医療をしているのか、その実際について症例を通して説明いたします。
これはすでに自律神経学会雑誌に発表した論文
(注3)を抜粋しています。
【症例】 Y君--- 中学2年生
主訴 朝起きがわるい、不登校。
現病歴 中学1年6月頃から、身体がだるくて起られず、週1度は欠席。
近医で低血圧を指摘され薬物治療。改善して登校再開。
翌年に再び悪化し、欠席が増え 12月から完全に不登校となる。
発症1年半後に初診し、精査目的で入院しております。
症状ですが、正午頃までぐっすり眠り、夜はたいへんに寝つきが悪い。
立ちくらみやめまい、頭痛、腹痛、倦怠感、食欲不振。
起き上がるとくらくらして気分が悪くなり、また寝てしまう。
これらの症状が不定期に現れるなどの不定愁訴があります。
また行動面では、成績の低下、自宅にこもる、集中できない、人前では緊張しやすい。

このような患者さんでは起立性調節障害
(注4)が考えられますが、
これはいわば、小児の自律神経失調症といってもよい病態であり、
当科では下記の写真のような自律神経機能検査を行っています。
現在までに、延べ1000人以上の不定愁訴を持つ子ども達にこの検査を実施してきました。
この検査法の概要を次に述べます。

この検査は、患者が寝た状態から自分で起立するだけの負担の少ないものです。
この時にフィナプレス
(注6)というハイテク装置を使用すると、カフを指に装着するだけで脈拍と血圧が一心拍毎に連続的に測定することができます。
また同時に近赤外光脳血液量測定装置(NIRS)を使用して脳循環(脳動脈血量)
(注7)を瞬間的に測定できます。
この検査法による健常小児の結果を下の図【大阪医科大学小児科における新しい自律神経
機能検査】に示します。矢印のところで寝た状態から起立すると、起立直後に一時的に血圧が低下し、脈拍は上昇しますが、起立20秒以内に直ちに元に戻ります。
これに一致して脳動脈血量も一時的に低下します。
フィナプレス起立試験法からみた不定愁訴の病態
主訴 朝起きがわるい、不登校。
この検査によって不定愁訴や起立性調節障害と診断された患者の中に、数種類の
循環調節異常
(注8)がみつかりました。下記の表や図に示したように、次のようなものがあります。
起立性調節障害のいろいろなタイプ
- Instantaneous orthostatic hypotension (INOH)
(起立直後性低血圧 -- 軽症型、重症型(注9)がある)
- Postural orthostatic tachycardia syndrome (POTS)
(体位性頻脈症候群)
- Neurally-mediated syncope (NMS)
(神経調節性失神)
- Delayed orthostatic hypotension
(遷延性起立性低血圧)
- Unknown (orthostatic hypertension etc.)